澤本研15 年間を振り返って(澤本 和延)

皆様、いつも当研究室を支えて下さいましてありがとうございます。早いもので、今年2022年に、当研究室は名古屋市立大学での研究室15周年を迎えました。以下、5年前に発行した10周年記念誌に掲載しました2005年〜2017年のまとめを再掲し、その後の主な出来事をまとめたものを追記いたします。

2005年 慶應義塾大学医学部に、「ブリヂストン神経発生・再生学寄附講座」を開設していただき、生理学教室(岡野栄之研究室)の中で半独立の研究グループをスタートしました。

2006年 UCSF時代に始めた脳脊髄液流とニューロン移動の関係 (Sawamoto et al., Science)、慶應で始めた脳梗塞後の再生メカニズム(Yamashita et al., J Neurosci; Ninomiya et al., Neurosci Lett)、アセチルコリンの作用(Kaneko et al., Genes Cells)のなどの論文を発表しました。

再生医学分野開設時のメンバー:左から池田麻紀子、
田中あや、小島拓郎、澤本和延、廣田ゆき、金子奈穂子

2007年 名古屋市立大学に引っ越し、5月1日に澤本が教授に就任して再生医学分野が発足しました。慶應から廣田ゆき先生が助教、金子奈穂子先生が井上フェローとして着任しました。田中あやさんが秘書として参加しました。澤本が事業推進担当者として参加した慶應G-COEの研究員として岸本憲人先生が着任し、ゼブラフィッシュを使ったadult neurogenesisの研究を開始しました。慶應時代から準備していたCdk5(Hirota et al., J Neurosci)やWnt/beta-catenin(Adachi et al., Stem Cells)の役割についての論文を発表しました。

2008年 筧理恵(旧姓上田)さん・野村育美さんが実験助手として参加しました。文科省再生医療実現化プロジェクトに採択され、学内の研究室と共同で再生医療の研究を始めました。

2009年 金子奈穂子先生が助教に就任しました。匹田貴夫先生が研究員として参加して生化学的な実験やFRETイメージングなどの実験系を立ち上げ、10月から特任助教に就任しました。科研費の若手研究Sに採択されました。厚労科研費に採択され、基礎・臨床の研究者と共に、うつ病の研究班をスタートしました。その担当者として鄭蓮順先生が特任助教に就任し、西村香絵さんが秘書として着任しました。3年目ですが、ラボからは原著論文を出せませんでした。

2010年 高橋淑子先生が代表の新学術領域「血管と神経」がスタートし、計画研究分担者として参加しました。廣田ゆき先生が慶應義塾大学医学部へ転出しました。小島拓郎さんが学位を取得しました。アストロサイトトンネル形成機構 (Kaneko et al., Neuron), 上衣細胞の繊毛の形成機構(Hirota et al., Development), 血管に沿ったニューロンの移動(Kojima et al., Stem Cells)、Diversinの役割(Ikeda et al., Stem Cells)などの論文を発表しました。

2011年 匹田貴夫先生が助教に就任しました。筧理恵(旧姓上田)さんが技術職員となり、教授室での仕事を始めました。夏洪晶さんが実験補助員として参加しました。慶應から矢口佳容さんが秘書として着任しました。鄭蓮順先生が中国に帰国しました。最先端次世代研究開発支援プログラムに採択されました。ラボミーティングを英語化しました。池田麻紀子さんが学位を取得しました。二光子顕微鏡による嗅球ニューロンの再生機構の解析(Sawada et al., J Neurosci)、コモンマーモセットの脳室下帯の構造(Sawamoto et al., J Comp Neurol)、ゼブラフィッシュの脳再生(Kishimoto et al J Comp Neurol; Dis Models Dis)などの論文を発表しました。

2012年 澤田雅人先生が学位を取得し、日本学術振興会PDとなりました。岸本憲人先生が特任助教に就任しました。鄭蓮順先生(浙江大学)が、外国人客員研究員として半年間滞在し、インターフェロンによるうつ病の研究を行いました。日本学術振興会二国間交流事業(フランスとの共同研究)がスタートし、研究室メンバーとパリを訪問しました。研究室開設5周年記念の会を開催しました。加古英介さん・加藤康子さんが学位を取得しました。オリゴデンドロサイトの再生(Kako et al., Stem Cells)、嗅球ニューロン新生の臨界期(Kato et al., PLoS ONE)、除放化技術による再生促進技術(Nakaguchi et al., Stem Cells Int)、嗅球ニューロンの成熟過程におけるPCPシグナルの機能(Hirota et al., Stem Cells)などの論文を発表しました。

2013年 澤田雅人先生が特任助教に就任しました。金子奈穂子先生が講師(助教級)に昇任しました。中村小百合さんが、実験補助員として参加しました。田中あやさんが産休代理職員として再登板しました。岸本憲人先生が企業に就職し、退職しました。武田科学振興財団の特定研究助成に採択されました。太田晴子さんが学位を取得しました。ゼブラフィッシュの成体ニューロン新生に関する論文(Kishimoto et al., Nat Neurosci)、プロテオミクスによるGirdn相互作用分子の探索(Ota et al., BBRC)などの論文を発表しました。

2014年 匹田貴夫助教がドイツマックスプランク研究所へ転出しました。澤田雅人先生が助教に就任しました。基盤研究Aに採択されました。テルモ生命科学芸術財団の特定研究助成に採択され、バイオマテリアルを使った再生誘導技術の研究を本格的に始めました。中口加奈子さんが学位を取得しました。Gmipによるニューロン移動の速度調節(Ota et al., Nat Commun)、Rac1によるchain migrationの際の細胞変形機構(Hikita et al., J Neurochem)、インターフェロンによるうつ病のメカニズム(Zheng et al., Stem Cell Rep)などの論文を発表しました。

2015年 日本学術振興会二国間交流事業(スペインとの共同研究)を開始し、ラボメンバーとバレンシア大学を訪問しました。科学技術交流財団による研究会事業として、神経再生イメージング技術開発研究会が発足しました。成体脳のニューロン新生懇談会を名古屋市立大学で主催しました。日本学術振興会の頭脳循環プログラムに採択され、医・薬・システムの研究室と合同でエピゲノムに関するセミナーや海外の連携機関との交流活動を開始しました。ラミニンスポンジによるニューロンの移動促進(Ajioka et al., Tissue Eng Part A)、ミノサイクリンによる抑うつ症状の治療(Zheng et al., Front Cell Neiurosci)などの論文を発表しました。第1回ラボ旅行を行いました。

2016年 西川みづ江さんが、技術職員(産休代替職員)として着任しました。生理学研究所に神経発達・再生機構客員研究部門を開設しました。神農英雄さんが学位を取得しました。ゼブラフィッシュの老化における上衣細胞の出現(Ogino et al., J Comp Neurol)、脳室下帯におけるWntシグナルの役割(Hirota et al., Neurochem Res)等の論文を発表しました。

2017年 藤岡哲平さんが学位を取得しました。4月に新たな研究費として、基盤研究(A)等を獲得しました。第2回ラボ旅行を行いました。5月に再生医学分野開設10周年記念の会を開催しました。Sawamoto Lab Breakthrough of the Yearの表彰を始めました。脳梗塞後に新生ニューロンが血管に沿って移動する際のインテグリンの役割(Fujioka et al., eBioMedicine)などの論文を発表しました。

2018年 金子奈穂子先生が准教授に昇任しました。澤田雅人先生が講師(助教級)に昇任しました。宮本拓哉さんがMD-PhDコース前期コースを当研究室で初めて修了しました。科研費の国際共同研究強化(B)に採択されました。新生仔脳傷害の後のニューロンの移動・再生における放射状グリアの役割(Jinnou et al Cell Stem Cell)、Filopodium-like lateral protrusionによるニューロン移動停止機構(Sawada et al EMBO J)、鎖状移動するニューロンの細胞接着解離におけるFynの役割(Fujikake et al J Neurosci)、Slitによる脳梗塞後のニューロンの移動・再生促進と機能回復(Kaneko et al Sci Adv)など、インパクトの高い論文を多数発表しました。

2019年 中嶋智佳子先生が特任助教に就任しました。伊藤麻衣子さんが技術補助員として参加しました。藤掛数馬さんが学位を取得しました。山本誠也さんと瀬戸弥生さんがMD-PhDコース前期コースを修了しました。この年は前年度の論文発表の効果もあり、大型研究費を複数獲得しました。AMEDの幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラムおよびAMED-CRESTに採択されて、研究を開始しました。キヤノン財団の研究助成プログラム「産業基盤の創生」に採択されました。日本学術振興会二国間交流事業(デンマークとの共同研究)も開始しましたが、翌年から感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で海外出張が禁止となり、一度も渡航できませんでした。移動する新生ニューロンの一次繊毛(Matsumoto et al J Neurosci)などの論文を発表しました。10月に分子医学研究所が改組されて脳神経科学研究所となり、研究室名が神経発達・再生医学分野に変わりました。

2020年 久保山和哉先生が特任助教に就任しました。松本真実さんが学位を取得し、生理研と名市大の研究員となりました。荻野崇さん、伊藤晃さん、エジプトのAhmed Lotfy Ahmed Mansourさんも研究員となりました。橋本真耶佳さんがMD-PhDコース前期コースを修了しました。初めて基盤研究Sに採択され、新生児脳におけるニューロン新生とその病態の研究を開始しました。コモンマーモセットの新生仔期におけるニューロン新生(Akter et al Cerebral Cortex)、インターフェロン投与によるコモンマーモセット海馬のニューロン新生と行動への影響(Kaneko et al Mol Brain)などの論文を発表しました。

2021年 竹村晶子先生が特任助教に就任しました。田中舞子さんが技術補助員、鈴木千智さんが秘書として、研究室に参加しました。この年から薬学部の学生(卒業研究)を受け入れることが可能になり、斎藤明里さんが配属されました。齋藤瑳智子さんと大竹杏佳さんがMD-PhDコース前期コースを修了しました。

2022年 五軒矢桜さんがMD-PhDコース前期コースを修了しました。3月に、医学部4年生(MD-PhDコース)の榑松千紘さんを筆頭著者として、ミクログリアによるシナプス刈り込みの機構に関する論文(Kurematsu et al J Exp Med)を発表しました(学部生が筆頭著者として発表した最初の論文となりました)。4月に、当研究室の発展に多大な貢献をして下さった金子奈穂子准教授が同志社大学脳科学研究科の教授に就任しました。名市大澤本研出身の最初の教授となりました。澤田先生が講師(助教級)から講師に昇任しました。当研究室出身の松本真実さんが生理研を退職し、博士研究員になりました。

 上の写真は、2007年3月に撮影された研究室の様子です。東京から誰もいない何もないこの部屋へ引っ越してきた時は、期待と不安で一杯でした。しかし、たくさんの人が研究活動に参加し、盛り上げて下さいました。メンバー1人1人の日々の努力と成長とともに、私達の研究室も少しずつ発達・成熟してきました。大変感謝しています。特に最近5年間は、皆様の長年の努力の成果が実り、次々と重要な論文として掲載されました。その結果、これまで手が届かなかった大型の研究費に採択され、新しいプロジェクトを開始し、特任助教の先生方に参加していただくなど、大きく発展しました。研究室の立ち上げから長年尽くして下さった金子奈穂子先生が同志社大学の教授となり、ご自身の研究室をスタートしたのも大変うれしい出来事でした。私の教授としての任期は折り返し地点を過ぎましたが、これからも研究室メンバーが成長し、研究室が発展していけるように、私も努力致します。卒業生の皆様も応援して下さい。