新生児期に存在する脳障害後の神経再生メカニズムを発見 ―新生児脳障害に対する再生医療への応用に期待

周産期医療の進歩により新生児の生存率は劇的に改善しましたが、重篤な神経学的後遺症を高率に合併する、低酸素性虚血性脳症などの新生児脳障害は依然として毎年数千人程度発生しています。傷害で失われた神経細胞(ニューロン)を再生させる治療法は未だ無いのが現状であり、新たな治療法の開発が望まれています。
この度、名古屋市立大学大学院医学研究科の 澤本和延教授(再生医学)(自然科学研究機構生理学研究所を兼任)と、神農英雄研究員(新生児・小児医学)らは、東京医科歯科大学やスペイン・バレンシア大学などとの共同研究により、マウスを用いた実験で、新生児期のみに存在する脳障害後の神経再生メカニズムを世界で初めて発見しました。
「放射状グリア」という、脳の発生期に幹細胞としてはたらき、ニューロンの移動の足場となる細胞は、生後すぐに消失します。研究グループは、新生児期では脳障害後にこの放射状グリアが維持され、脳内に存在する幹細胞から産生されたニューロンが、放射状グリアの長い突起を足場として傷害部へ効率よく移動することを発見しました。さらに、放射状グリアを人工的に模倣した足場を新生児期の傷害脳へ埋め込むことによって、傷害部へのニューロンの移動を促進するとともに、歩行機能を回復させることに成功しました。
新生児期にのみ備わるこの神経再生メカニズムをヒトへ応用することによって、新生児脳障害の再生医療につながることが期待できます。