脳梗塞後のニューロン新生と虚血部への移動
Yamashita T*, Ninomiya M*, Hernandez Acosta P, Garcia-Verdugo JM, Sunabori T, Sakaguchi M, Adachi K, Kojima T, Hirota Y, Kawase T, Araki N, Abe K, Okano H, Sawamoto K (*equal contribution).
Subventricular zone-derived neuroblasts migrate and differentiate into mature neurons in the post-stroke adult striatum.
J Neurosci 26:6627-6636 (2006).
マウス脳梗塞モデルを用いて、脳梗塞後に側脳室下層の神経幹細胞、神経前駆細胞が増殖し、その一部が虚血巣へ遊走し、成熟ニューロンとなることを明らかにした論文です(上図左)。また、この虚血巣へ遊走する際に神経前駆細胞(緑)が脳内の血管(赤)を足場として遊走することを明らかにしました(上図右)。苦労話は尽きませんが、マウス脳梗塞の長期生存モデルの作成自体が困難の連続でした。当時脳梗塞動物モデルはラットが主流で、マウスで脳梗塞モデルを作成したとしても5日以内に評価することが多かったのですが、この実験のためには脳梗塞作成後28日以上長期生存モデルを作成する必要がありました。しかしながら、実験を始めた当初は脳梗塞が作成できたと思っても多くのマウスが術後6-7日目で死亡することが相次いで起こり、実験を始めて約2か月目で澤本先生にこの長期生存モデルの樹立自体が不可能なのではないかと相談に乗ってもらった記憶があります。結局は手術手技自体の向上や血管クリップの工夫等で生存率が大幅に改善し、実験を継続することが出来ました。
現在この論文の引用回数は2006年に掲載されて以降10年間で400回を超えてきており、様々な総説にも引用される論文となりました。またこの論文のおかげで2009年からのニューヨークのコロンビア大学に海外留学する際も採用にこぎつけることができました。様々な意味で私の人生を変えるターニングポイントとなった論文だと思っています。(山下徹)
Kaneko N, Okano H, Sawamoto K