名古屋市立大学脳神経科学研究所

SAWAMOTO LAB 澤本研究室 - 名古屋市立大学医学研究科脳神経科学研究所 神経発達・再生医学分野

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新生ニューロンがアストロサイトにトンネルを形成させながら移動するメカニズムに関する論文が掲載されました。A new paper published in Neuron

新生ニューロンがアストロサイトにトンネルを形成させながら移動するメカニズムに関する研究の成果が、Neuron誌に掲載されました。

Kaneko N, Marin O, Koike M, Hirota Y, Uchiyama Y, Wu JY, Lu Q, Tessier-Lavigne M, Alvarez-Buylla A, Okano H, Rubenstein JL, Sawamoto K

New Neurons Clear the Path of Astrocytic Processes for Their Rapid Migration in the Adult Brain. 

Neuron 67:213-223 (2010)

筆頭著者による研究内容の解説はこちら

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New Neurons Clear the Path of Astrocytic Processes for Their Rapid Migration in the Adult Brain.

Kaneko N, Marín O, Koike M, Hirota Y, Uchiyama Y, Wu JY, Lu Q, Tessier-Lavigne M, Alvarez-Buylla A, Okano H, Rubenstein JL, Sawamoto K.

FULL TEXT Neuron. 2010 Jul 29;67(2):213-223.

PREVIEW in Neuron:?Going Tubular in the Rostral Migratory Stream: Neurons Remodel Astrocyte Tubes to Promote Directional Migration in the Adult Brain

Research Highlights in Nature:Tunnelling brain cells

Research Highlights in Nature Reviews Neuroscience: Neuron-Glia Interactions A tunnel signal

名古屋市立大学によるプレスリリース

名古屋市立大学医学研究科・澤本和延教授と金子奈穂子助教らの研究グループ(再生医学)は、脳内でつくられる新しい神経細胞が長距離を高速度で移動するしくみを解明しました。この成果は、米国の科学雑誌Neuronに掲載されます。

近年、大人の脳の中にも幹細胞が存在し、新しい神経細胞がつくられていることがわかってきました。そのような神経細胞が脳で働くためには、つくられた場所から遠く離れた場所へ移動しなければなりません。たくさんの細胞が密集している脳の中を、どのようにして神経細胞が移動するのかは、これまで不明でした。今回の研究により、新しい神経細胞が周囲の細胞を押し分けてトンネル状の通り道をつくるしくみによって、長距離を高速度で移動できることが初めて解明されました。

このしくみは、例えば脳梗塞や脳室周囲白質軟化症などの脳疾患を再生医療によって治療する方法の開発に役立つ可能性があります。

本研究は、本学の他、順天堂大学、慶應義塾大学、ミグエルヘルナンデス大学(スペイン)、ノースウエスタン大学(米国)、シティオブホープ医学研究所(米国)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)、ジェネンテック社(米国)が参加した国際共同研究です。

背景:近年の研究により、成人の脳にも幹細胞が存在して、新しい神経細胞(ニューロン)をつくり続けていることが明らかになってきました。脳の内部にある側脳室の壁に沿って存在する「脳室下帯」と呼ばれる部分は、脳内で最も活発にニューロンがつくられている場所です。この脳室下帯でつくられた神経細胞は、脳の前方まで長距離を移動して、嗅覚に関連したさまざまな機能を担う細胞へと成熟します。また脳梗塞などの疾患によってたくさんの脳細胞が死滅すると、傷害を受けた部位に移動してニューロンの一部を再生します。しかし、脳は細胞や線維が密集した組織であり、これらのニューロンがその中をどのようにして遠くまで移動しているのか、そのしくみは分かっていませんでした。今回我々は、ニューロンがアストロサイトという別の種類の細胞がつくるトンネルの中を通ることに着目して、そのしくみを詳しく調べました。

研究手法:細胞移動の調節に関わるSLITタンパク質をコードする遺伝子を欠失したマウスの脳を解析したところ、脳室下帯からのニューロンの移動速度が低下し、トンネルを形成するアストロサイトの形が不規則になっていることがわかりました。SLITタンパク質の受容体であるROBOの分布を調べたところ、トンネルを形成しているアストロサイトに局在していました。様々な培養法を使って、細胞の形の変化や移動する様子を詳細に解析したところ、ニューロンが分泌するSLITがアストロサイトの表面に存在するROBOに結合すると、アストロサイトが引っ込んで脳内にトンネル構造がつくられることがわかりました。

結論:移動するニューロンがSLITタンパク質を分泌することにより周囲のアストロサイトに働きかけ、自らの高速移動のためのトンネルの整備を行うという新しいメカニズムが明らかになりました。

医療への応用の可能性:脳内におけるニューロンの移動をコントロールして目的の部位に効率よく到達させることが可能になれば、現在は治療の難しい脳の病気、例えば脳梗塞や脳室周囲白質軟化症・神経変性疾患などを、私たち自身が持っている再生能力を活用し「再生医療」によって治療する方法の開発に役立つ可能性があります。また、iPS細胞を使って作成した神経細胞を移植する再生医療においても、移植後の細胞の移動をコントロールすることが重要と考えられます。

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