インターフェロンによるうつ病発症と成体ニューロン新生
Zheng LS*, Hitoshi S*, Kaneko N*#, Takao K, Miyakawa T, Tanaka Y, Xia H, Kalinke U, Kudo K, Kanba S, Ikenaka K, Sawamoto K#. (*equal contribution, #correspondence)
Mechanisms for interferon-alpha-induced depression and neural stem cell dysfunction.
Stem Cell Rep 3: 73-84 (2014).
海馬は感情・情動の制御に関わり、その機能低下は様々な精神・神経疾患の病態と関連があります。海馬の歯状回という領域では、神経幹細胞が生涯にわたってニューロンを新生しています。ニューロン新生の減少が、うつ病などの精神疾患の発症や病態生理に関与する可能性が示唆されていますが、この現象の生理学的・病態生理学的意義は部分的にしか解明されていません。
炎症性サイトカインであるインターフェロン-α(IFN-α)は、慢性ウィルス性肝炎や悪性腫瘍の治療薬として用いられていますが、長期投与により高頻度にうつ病を発症します。これは治療完遂の大きな妨げとなっていますが、そのメカニズムは不明です。この研究では、長期のIFN-α全身投与によってうつ病様行動変化が生じるマウスモデルを作製して、IFN-αが中枢神経系のインターフェロン受容体を介して神経幹細胞の増殖を抑制し、うつ病様行動変化を惹起していることを明らかにし、ニューロン新生の抑制がIFN-α誘発性うつ病の発症メカニズムの一旦を担っている可能性を示しました。
この研究は、特任助教の鄭蓮順さんと一緒に行ったものです。彼女は論文投稿前に母国である中国に帰国することになり、一緒に鏡開きをすることができなかったのが心残りですが、私にとっては初めてcorresponding authorにして頂いた思い出の深い論文です。(金子奈穂子)