シナプスの数を調節するしくみ
Kurematsu C, Sawada M, Ohmuraya M, Tanaka M, Kuboyama K, Ogino T, Matsumoto M, Oishi H, Inada H, Ishido Y, Sakakibara Y, Nguyen HB, Thai TQ, Kohsaka S, Ohno N, Yamada MK, Asai M, Sokabe M, Nabekura J, Asano K, Tanaka M, Sawamoto K.
Synaptic pruning of murine adult-born neurons by microglia depends on phosphatidylserine.
J Exp Med 219: e20202304 (2022).
成体脳において、脳室下帯または海馬歯状回で産生された新生ニューロンは、それぞれ嗅球および海馬の神経回路へと組み込まれます。成体新生ニューロンの成熟過程において、シナプス形成機構については、様々な分子メカニズムが報告されていますが、シナプス刈り込み機構については不明な点が多く残されています。この論文では、成体新生ニューロンのシナプスの表面に露出したフォスファチジルセリン(PS)をマスクすることができる新しい遺伝子改変マウス(D89Eマウス)を作成し、ミクログリアがPS依存的に成体新生ニューロンのシナプスを貪食するということを示しました。実験を始めてしばらくして、発達期でミクログリアがPS依存的にシナプスを貪食することが示され、論文作成が急がれておりましたが、実験にご協力いただいた共同研究者の先生方に心より感謝申し上げます。
私は、2年生の春からMD-PhDコースに入り研究を始めました。研究をしっかりやってみたいという漠然とした思いはありましたが、実験ではうまくいかないことの方が多く、論文を仕上げるまでの道のりは想像以上に大変でした。特にこの論文では、初回投稿から掲載まで1年以上かかり、リビジョン期間中は大量の実験と大学の授業やテストに追われ、心が折れそうになる場面が数多くありました。しかし、そのような状況の中でも何とかやり遂げられたのは、澤本先生や澤田先生に熱心にご指導いただき、新しい発見をすることの価値や楽しさを感じることができたからだと思っております。また、最後まで粘り強く実験を続けることで人間的にも大きく成長することができ、論文作成に挑戦して本当によかったと感じています。
繰り返しになりますが、論文完成に向けてご尽力いただきました、澤本先生、澤田先生をはじめとする研究室の皆様ならびに共同研究者の先生方、誠にありがとうございました。(榑松千紘)