生後脳を移動する新生ニューロンの微細形態と一次繊毛の動態
Matsumoto M*, Sawada M*, García-González D, Herranz-Pérez V, OginoT, Nguyen HB, Thai TQ, Narita K, Kumamoto N, Ugawa S, Saito Y, Takeda S, Kaneko N, Khodosevich K, Monyer H, García-Verdugo JM, Ohno N, Sawamoto K. (*equal contribution)
[SM1] Dynamic changes in ultrastructure of the primary cilium in migrating neuroblasts in the postnatal brain.
J Neurosci 39: 9967-9988 (2019).
生後の脳室下帯の神経幹細胞から産生された新生ニューロンは、嗅球まで移動し、成熟します。一次繊毛はシグナルセンサーとして働いており、神経細胞の増殖や成熟への関与が報告されていました。
しかし、生後脳内を移動する新生ニューロンの一次繊毛の詳細は不明でした。そこで、この論文では、三次元電子顕微鏡などを用い、移動する新生ニューロンの一次繊毛の形態的特徴と細胞内に埋もれた一次繊毛が新生ニューロンの移動時期依存的に細胞外へ突出することを明らかにました。これらの結果から、生後脳の新生ニューロンにおける一次繊毛の時空間的な挙動変化と効率的なニューロン移動に密接な関係があることが示唆されました。
この論文は、私の博士課程の研究テーマの1つをまとめたものです。一次繊毛はその存在を明らかにすることさえ大変苦労しましたが、Verdugo研究室で習得した技術を用いて、初めて新生ニューロンに明瞭な一次繊毛を観察できた時の感動を今でも忘れられません。本論文は多くの共同研究者の方のご尽力を得て、論文にまとめることができ、無事に学位を取得することができました。特に、澤本先生には粘り強く熱心なご指導をいただきました。また、co-firstになっていただいた澤田先生には修士課程からのご指導にあわせ、実際の論文の実験・執筆など何から何までお世話になりました。末代に渡るまで澤本先生と澤田先生の方角に足を向けて寝ることはできません。澤本先生、金子先生、澤田先生を始めとするスタッフの皆様、そして同時期にラボで切磋琢磨した諸先輩方と同志の存在に感謝する一報となりました。 (松本真実)