脳傷害後ラミニンスポンジの移植による新生ニューロン移動促進
Ajioka I*, Jinnou H*, Okada K, Sawada M, Saitoh S, Sawamoto K. (*equal contribution)
Enhancement of neuroblast migration into the injured cerebral cortex using laminin-containing porous sponge.
Tissue Eng Part A 21: 193-201 (2015).
脳傷害後には、脳室下帯由来の新生ニューロンが傷害部へ血管を足場として移動します (Yamashita 2006, Kojima 2010) 。この現象から、脳傷害部へ足場血管を提供することによって、傷害部への新生ニューロン移動を誘導できるのでは、という仮説を立てました。本研究は東京医科歯科大学の味岡逸樹先生との共同研究であり、血管基底膜の主要成分であるラミニンを含有した3次元網目構造を持つスポンジを人工足場血管として味岡先生に作製していただきました (Ajioka 2011) 。このラミニンスポンジを脳傷害部へ移植したところ、新生ニューロンがラミニンスポンジを足場として移動し、炎症が増大することなく脳傷害部への新生ニューロン移動を促進することに成功しました。
博士号が授与されたとき娘からお祝いの手作りメダルをいただきました。
この共同研究の中で、味岡先生へ脳傷害モデルを教えることになったのですが、当時大学院1年生の私が、Cell に論文を出した高名な先生へ教えてよいものか…と緊張しながら行った思い出があります。味岡先生にはこの論文の後もご協力いただき、新生児脳傷害後における放射状グリア突起を足場にしたニューロン移動・再生プロジェクトにおいても、放射状グリア模倣スポンジを作製していただき、その有効性を見出す事ができました。あの時緊張しながら頑張ってよかったと思うのと同時に、複数の施設が協力し総力を結集することが、質の高い研究を遂行する上で不可欠であることを強く感じました。(神農英雄)