Wntシグナルの新規構成因子Diversinの発現
Ikeda M, Hirota Y, Sakaguchi M, Yamada O, Kida YS, Ogura T, Otsuka T, Okano H, Sawamoto K.
Expression and proliferation-promoting role of Diversin in the neuronally committed precursor cells migrating in the adult mouse brain.
Stem Cells 28:2017-2026 (2010).
脳梗塞などの脳損傷モデルにおいて脳室下帯に存在する神経幹細胞から新しいニューロンが供給されることが報告され、損傷した中枢神経系組織の修復に内在性の神経幹細胞が利用できるのではないかと期待されています。本研究ではWntシグナルの新規構成因子Diversinに着目し、Diversinが成体と幼若期の脳において脳室下帯の新生ニューロンと嗅球の成熟ニューロンに発現している事を明らかにしました。さらに、脳室下帯へレトロウィルスを用いて遺伝子を導入し、Diversinの過剰発現が新生ニューロンの増殖を促進する事を明らかにしました。RNA干渉法を用いたDiversinのノックダウンによって新生ニューロンの増殖が抑制された事から、Diversinは新生ニューロンの増殖に重要な生理的機能を果たしていると結論づけられ、不明であった新生ニューロンの増殖制御機構の一端が解明されました。
この研究は、生まれて半年余りの娘をかかえ、大学院に入学して何もわからない中で始めました。ラボ自体も名市大に移ったばかりでしたし、うまくいかない事ばかりでした。でも、周りの先生方、大学院生の仲間がとても親切で優秀な方ばかりだったので、支えられながら、私も娘も大いに刺激をうけて成長した4年間でした。「少しずつでも努力して、少しずつでも人のためになれるように心がける」それが、ラボで学んだ一番大切なことでした。あれから6年がたとうとしていますが、娘にとってはラボで出会った方々は今でも憧れらしく『ラボの顕微鏡ならプランクトンって見られるのかな?○○さんどうしてるかな?○○さんみたいにどうしたらなれるの?』などと、思い出しては話をしており、この研究で娘にまかれた未来の種が大きく育ってくれたらなと思っています。(池田麻記子)