新生ニューロンの接着制御機構
Fujikake K*, Sawada M*, Hikita T, Seto Y, Kaneko N, Herranz-Pérez V, Dohi N, Homma N, Osaga S, Yanagawa Y, Akaike T, García-Verdugo JM, Hattori M, Sobue K, Sawamoto K. (*equal contribution)
Detachment of chain-forming new neurons by Fyn-mediated control of cell-cell adhesion in the postnatal brain.
J Neurosci 38: 4598-4609 (2018).
“麻酔科の先輩である加古先生、太田先生が在籍しているから”という軽い理由で澤本研に来た私が初めて行った実験は、287種類の阻害薬が記載されている“阻害薬リスト”を用いたスクリーニング実験でした。右も左も分からない私は何も疑うことなく実験を始めましたが、スクリーニングは当たりが出るかどうかも分からない作業。暗闇の中で小石を拾っては捨てるような作業を繰り返しました。普段は音楽を聴かない私ですが、この時はジャニーズの嵐が歌う明るい曲に励まされました。マトリゲルカルチャーが上手くできない時期に深夜の4℃部屋の中で数時間作業をしたこともあります。きっと病んでいたのだと思います。
そのような時期を乗り越えて“阻害薬リストには載っていない”Src family tyrosine kinase阻害薬に絞ることになりました。Src family tyrosine kinaseの1つであるFynにテーマが決まってからはノックダウン実験やタイムラプスイメージングなどを行い、新生ニューロンがRMSから嗅球へ移動する際に起こるchain migrationからの離脱をFynが促進していることを示すデータが集まりました。しかし、それだけでは許してくれないのが澤本研です。Fynの上流と下流シグナルを探すことになりました。上流は過去の文献などからReelin-Dab1で見当がついていたのですが、下流の接着分子は皆目見当がつかない状態でした。しかし最初に確認したN-カドヘリンが当たりという運もあり、なんとか論文化することができました。
今思い返すと暗闇で小石を拾っては捨てる作業で培った『感覚』のおかげでN-カドヘリンを選ぶことが出来たのだと思います(思いたい)。澤本先生は全てを見越した上で試練を与えて下さっていたのだと感謝しております。ありがとうございます。もちろん直接ご指導いただいた匹田先生、澤田先生にも多大なご迷惑をお掛けしました。ありがとうございました。
論文紹介のご依頼でしたが、紹介するスペースがなくなってしまいました。申し訳ございません。詳しくは論文のアブストラクトを読んでいただくか、藤掛まで問い合わせて頂けますと幸いです。