名古屋市立大学脳神経科学研究所

SAWAMOTO LAB 澤本研究室 - 名古屋市立大学医学研究科脳神経科学研究所 神経発達・再生医学分野

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コモンマーモセットの海馬神経新生と行動へのインターフェロンαの影響

Kaneko N#, Nakamura S, Sawamoto K#. (#co-correspondence)
Effects of interferon-alpha on hippocampal neurogenesis and behavior in common marmosets. 

Mol Brain 13: 98 (2020).

 私は山梨大学医学部付属病院の精神神経科に在籍中に大学院に進学しました。臨床でインターフェロン誘発性うつ病の患者さんの診療に当たったことをきっかけに、大学院ではインターフェロン誘発性うつ病モデルを用いた基礎研究を始めました。この研究を澤本研で更に発展させて、インターフェロンαがげっ歯類にうつ病様行動変化と神経幹細胞の増殖抑制、ニューロン新生減少を引き起こすことを報告しました(Kaneko 2006; Zheng 2014; Zheng 2015)。では、霊長類でも同じような変化が起きるか、ということに取り組んだのがこの研究です。

 コモンマーモセット成獣に、臨床薬剤であるヒトPEG-IFNα(ポリエチレングリコールを付加した徐放化製剤)とBrdUを投与して、1ヶ月後にBrdU標識された海馬の新生ニューロン数を定量しました。また、カスタムメイドのジャケットに加速度計を入れて装着させ、活動量を持続的にモニターしました。PEG-IFNαはBrdU標識された新生ニューロン数を減少させ、また、実験開始後の活動量の回復に遅延が生じました。一方、げっ歯類脳において新生ニューロンの成熟に十分な期間である1ヶ月では、マーモセットの新生ニューロンの大部分がDcx陽性の未熟な状態のままでした。つまり、ニューロン新生の減少がこの実験で観察された行動変化の直接の原因とは考えにくい、ということです。

 インターフェロンの受容体への親和性は動物種特異性が高く、マーモセットに投与したヒトPEG-IFNαの薬理作用は限定的であること、また、異種タンパクの投与によって速やかに中和抗体が誘導され、1ヶ月以上の長期投与は効果が期待できないことなど、この研究には色々な制限がありました。基礎自主研修で武田祐佳さん(2013年)、服部員長くん(2014年)にも参加してもらいました。また、中村小百合さんはこの研究の大部分に関わり、2015年に澤本先生が世話人をされた「成体脳のニューロン新生懇談会」でポスター発表しました。彼らが行った実験の一部しか論文に含めることができなかったのは心残りですが、澤本研にいる間に何とか論文として世に送り出すことができました。

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